ぼんやりと湧き上がった疑念が、衝撃の確信に変わってしまった!
決して許せないはずの相手は、どうしても憎むことができない存在で…
そして彼は…被害者遺族が抱える心の痛みと同じくらい大きな心の傷を負った罪のない少年でした!
加害者家族との遭遇!
『の、ような。』
4巻の解説と感想です♪
今回のお話はすごくデリケートな上にかなりヘビーな内容で、
これまでのある意味で痛快なヒューマン「スカッと」ドラマではなく、
人の”心”のひだに語りかけた深く考えさせられる重く切ない内容で、
ついつい途中で読み進めることをためらってしまうほど気持ちが暗くなりました(汗)
3巻の解説と感想はコチラ
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4巻の見どころ
これまでどんなに深刻な状況であっても、希夏帆の毅然とした生き方やその行動力を描いて、
どこかスカッとするエピソードとして、さまざまな諸問題を処理してきた『の、ような。』のリアル系ストーリーでしたが、
今回のお話は、
「ついにこのテーマに入ったか!」
という本作において最大のテーマに差し掛かったように思える内容でした。
それは・・・
両親をトツゼン事故で失った兄弟の悲しみと心の傷、そして葛藤です(汗)
これまでは、他人同士がなんとか助け合って生活してゆくことだけで精いっぱいで、
親を失った悲しみと向き合う時間さえなかった冬真と春陽ですが、
だんだんと生活が落ち着いてきたことによって少しづつ両親がいなくなった現実に向き合う事となってくるわけです。
それは…冬真と春陽を引き取った側の希夏帆や愁人にとっても同じことで、
無我夢中で二人の面倒をみてきた彼らが、いつか正面から受け止めてあげなければいけない冬真と春陽の心の傷であった!
さて・・・
4巻の見どころは、
亡くなった両親に思いを馳せる春陽への希夏帆の対応と、
冬真が思いかけず遭遇してしまった加害者家族に対する心の葛藤である!
これらはすごく重いテーマなだけに、ついつい読んでいるのが苦しくて、
いつしか無意識に飛ばし読みでページをめくってしまっていたサイト主のまるしーなのですが、
よく考えると、この『の、ような。』で著者が一番描きたかったメッセージとは、
「この4巻から始まる内容ではないだろうか?」
と…なんとなくそう感じたまるしーは、改めて時間をおいてからもう一度じっくりと読み返してみました。
すると・・・
流し読みでは見えなかった著者の読者に伝えたいメッセージがなんとなく心に捉えたような気がします。
そして・・・
その答えは恐らく次の5巻に出ているのだろうと今はそう思っています。
の、ような。 【ネタバレ4巻】加害者家族との遭遇!
心のストッパー
これまで、どんなに大変な状況になったとしても、春陽の天真爛漫な天使キャラのおかげで救われて来た希夏帆と愁人だったが、
そんな天使に異変が生じます!
ある雨が激しく降りしきる朝、明らかに元気のない春陽の様子をみた希夏帆は、
思い切って春陽を幼稚園に行かせずに休ませました。
実際のところ…春陽を休ませて困るのは仕事と家事に追われて年中寝不足になっている希夏帆なのだが、
尋常ではないほど元気がない春陽のことが妙に気がかりで、
大変な事を承知で目の前の笑顔を失った天使との時間を優先したのです。
すると・・・
PCに向かうことなく希夏帆が二人きりでしばらく春陽と過ごしているうちに、
今までは忙しさの中で気づけなかった春陽が抱える心の傷を知ることとなったのです。
なぜか春陽は雨の日がすごく苦手だということと、
希夏帆たちと暮らすようになってから、顔や口には出していなかったが、
ずっと両親に会いたいと心で思っていたことだ。
しかも・・・
その気持ちを希夏帆たちに気を使った兄の冬真によって押さえつけられていたのです。
そんなモヤモヤとした気持ちが鬱積して、ついにこの雨の日に春陽のガマン袋が破裂したようで、
この日…初めて春陽は希夏帆の前で、
「お母さんに会いたい」と子供らしく号泣したのです。
まだまだ母親の愛情が必要な春陽の幼い年齢で、
ここまで両親に会いたい気持ちを押し殺していた春陽の気持ちを慮って胸を熱くする希夏帆。
そして・・・
いつものように冷静な感覚と判断で、春陽にとって何が最善な対応策なのかを熟慮した希夏帆は、
今後は口に出したい時に両親に会いたい気持ちを声に出してもいいし、
思い出したい時に思う存分母親を思いだし、その恋しい感情をそのまま押し殺さずに希夏帆たちへぶつければいいと春陽に諭しました。
冬真によって装着された春陽の中にある心のストッパーを外してあげたのです。
それによって少しづつ従来の元気な姿に戻っていった春陽でしたが、
その後…
冬真の口からなぜ春陽が雨の日になると調子がおかしくなる原因を聞かされ、
さらに…希夏帆は春陽の負った心の傷の深さを再認識するのです(汗)
両親が事故で亡くなっ日の天気が雨だったことを聞いて・・・
そうです。
春陽にとって雨が降りしきる日は、いなくなった両親を否応なく思い出してしまう瞬間だったのです!
加害者家族との遭遇!
4巻の前半は春陽が情緒不安定な状況となり、それを冬真とともにリカバリーしてゆく希夏帆の姿が描かれた内容でしたが、
中盤から後半にかけては兄の冬真が抱えるヘビーな問題が描かれてゆきます。
その問題の趣旨を簡単に言ってしまうと、
冬真と春陽の両親の命を奪うことになった交通事故を起こした加害者家族との遭遇です!
しかも・・・
その人物は冬真のクラスメイトでもあり、いつも仲良くしている栢沼圭(かやぬまけい)という親友の一人だったのです(汗)
冬真がなんとなくその事に気づいたきっかけは、
何気ない会話の中で栢沼の両親が離婚する前の名字が事故の加害者である”満平(みつひら)”だと知った時でした。
その時、冬真と栢沼は同時に何かを感じ取ったのですが、
お互いに事故のことに関して何も言いだせないまま数日が過ぎ、
ある日、黙っていることの罪悪感に耐えきれなくなった栢沼がついに冬真へカミングアウトしたのです(汗)
「冬真のご両親の事故の相手…俺の父さんなんだ!」
ある程度冬真も想像していたこととはいえ、やはりそのショックは大きかった!
さらにこの瞬間、二人は親しい間柄の友人関係から、
”被害者家族と加害者遺族”というなんとも理屈では言い表せない辛い関係性に立たされたのです(汗)
事故を起こして両親の命を奪った責任はすべて栢沼の父親の責任であることを頭では理解しつつも、
どうしても栢沼に対する心の中のモヤモヤが晴れない冬真。
同時に・・・
自分の父親が親友の両親の命を奪ったという事実に苦悩する栢沼。
思春期の真っただ中にいる二人の少年が抱える重いテーマに対峙した時、
一体彼らの中でどんな葛藤が生まれ、それらをどうやってそれを乗り越えてゆくのか?
すごくきめ細やかに描かれた4巻の後半は、読んでいて胸が苦しくなる切ない展開でした・・・
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4巻の感想
もちろん、加害者家族である栢沼少年には何の責任もない。
しかし・・・
両親の命を奪われた被害者遺族の冬真としては、どういう気持ちで加害者の家族と接すればいいのか?
恐らくその立場に立ってみないと理解しにくい感情でしょう。
俗に言われている「被害者感情」というものは、
人それぞれ悲しみの度合いや怒りの大きさが異なるし、亡くした家族に抱いていた愛情の深さによっても変わってきます!
そんな中でも、
幼い春陽や思春期の冬真の二人がトツゼン両親を事故で亡くすというケースは、
「その後の人生に係る影響力がハンパない!」
この兄弟にとって両親の存在というのは、彼らが生きてゆくうえでなくてはならない存在であり、
二人にとっては、悲しみ云々と言うより、その後の人生を壊しかねない大きな出来事なのです(汗)
今回は運命のイタズラでその加害者家族と被害者遺族が友人関係というなんとも辛い状況が発生し、
否応なくこの重すぎるテーマに向き合わなければいけなくなった冬真と栢沼の立場でした!
こういう尋常では計り知れない辛すぎる状況を乗り越えて友人関係を今後も続けてゆくも良し、
今後はなるべく接触しないようにお互いがお互いを刺激しない距離を保つのも良し、
「全ては当事者が決めればいいことだと思う。」
こんな事に正しい答えなんてあるわけがないんだから・・・(汗)
あと・・・
前半部分で描かれていた春陽の抱えているトラウマや悲しむ様子が実にリアルな描写で描かれており、
少しでも気を抜いたらとめどなく涙がこぼれ落ちそうでたまらなかった。
「お母さんに会いたい」と言って号泣する春陽は、まだ人間の”死”ということの意味をまだちゃんと理解していないんです。
でも・・・
彼は直感的にもう両親とは会えないということを感じ取っているわけで・・・
知らないうちに二度と大好きな両親に会えなくなったわずかまだ5歳の春陽の胸の内は、
自分には大昔過ぎて想像すらできない感覚だけれど、
計り知れない悲しみとストレスにさいなまれている事は間違いないでしょう。
本来ならば両親の愛を一身に受けなければいけない大事な時期に、
見ず知らずの大人と一つ屋根の下で生活しなければいけないわけですから、
あのような情緒不安定状態になるのは至極当然なことといえるでしょう。
ただ・・・
本作を読んでいると、とにかく著者である麻生海 先生が描く作品の世界観と、
リアルでヒューマニックなストーリーに圧倒されます(汗)
ほんとよくできた連続TVドラマを観ているような感覚で、
これほど取り立てて派手な演出もない日常風景をドラマチックに描ける漫画家さんてそうそう存在しないと思う。
だからこそ時に内容がリアルすぎてフィクションなのにメンタルが落ち込んでしまう事があるのです(汗)
今回のお話は特にハードで色々と考えさせられる内容でした。
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