著者:日高トラ子
『天才子役、誘拐される』
天才子役・古代(こだい)シズマが何者かに誘拐された!
やがてこの誘拐事件は、 警察、芸能界を巻き込んだ誘拐リアリティーショーとして、日本国民を熱狂させることに…
「犯人たちの目的は金か?」
そして…
息子の窮地に際しても、まだまだこの事件を利用して金儲けを模索するシズマの父親。
そう…
「この作品は、腐った人間社会に一石を投じる社会派ヒューマンサスペンスだ!」
この漫画は、新しいタイプの誘拐エンターティメント作品です♪
TVを使って犯人との交渉や取引を重ねて、事件をエンタメ化してゆくような物語は、
小説や漫画なんかではすでにお馴染みなのですが、
そこに、SNSや金儲け、テレビ局とのリアルで泥臭い駆け引きなんかも取り入れて、
エンタメというより、犯罪捜査や報道の裏側まで突っ込んで、
毒を吐きまくってるような社会派のサスペンス・ストーリーなんです。
「読んでいると血がたぎる♪」
『天才子役、誘拐される』の見どころ
『天才子役、誘拐される』の見どころとは、
すでにあるパワーワードなアイテムを、すべて新しくアレンジして、
どこか最高のマイナーチェンジを施してリリースされたスポーツカーのような新鮮味ですね。
サイト主のまるしーが、この作品を読んで一番最初に感じたのは、
『新世紀エヴァンゲリオン』というアニメ作品ですね。
天才子役のシズマが綾波レイで、
シズマの父親・古代進太郎(こだいしんたろう)が、碇ゲンドウです。
このニュアンス、分かる人にはわかっていただけると思うんですが、
なんか、この『天才子役、誘拐される』という作品に漂う世界観や空気感が”エヴァ”なんです。
なので・・・
好きな人にはたまらなく刺さる漫画だと思います♪
ストーリーの切り口が、どこか読者を裏切ること念頭に置いて作られているようなエキセントリックさがあり、
そのくせちゃんと読者がもっと読みたくなるような仕掛けを放りこんでくる当たり、
著者の日高トラ子さんという漫画家さんは、かなり有能な作家さんなんだと思っています♪
天才子役・古代シズマの誘拐事件を発端にして、社会にはびこる魑魅魍魎な泥臭い人間たちが、
まさしく人間臭い自分都合ばかりの行動に終始する大人たちの様が繰り広げられ、
「正義や道徳などの金にならないものは全て踏みにじられてゆくある種の爽快感♪」
この漫画は不道徳だけど、正直でありとてもリアルで正しい。
なんか・・・
まるしーのコメントもだんだん”エヴァ”を語る時みたいに理屈っぽくなってきた・・・
いかんいかん!
これは、かなりイケてる令和新時代の誘拐エンターティメント・サスペンスなんだから・・・
『天才子役、誘拐される』の立ち読み♪
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天才子役誘拐される【ネタバレ解説】過激な犯罪エンタメがココに!
1話:天才子役、誘拐される
弱冠11歳で天才子役のなを欲しいままにする古代シズマという美少年が主人公です。
テレビや映画で様々な役どころを演じ、今や日本中にその名前が轟いているシズマだったが、
この物語はそんな彼が何者かによって誘拐されてしまうところからスタートします。
いつもならずっとシズマに付き添っているマネージャー・広田がシズマを一人で家に帰られることになったは、
送迎用の車がパンクしていたからだ。
そのため、一人で夜道を歩いていたシズマは、黒いワンボックスに乗った怪しげな男二人に誘拐されてしまった。
ただ・・・
シズマは、自分が誘拐された事実を知ると、利発で冷静なポテンシャルを見事に発揮して、
バカで間抜けな犯人たちを出し抜き、隙をみてすぐに犯人たちから脱出に成功します。
だが、
その後シズマは、
高速のドライブインに駐車していた大型トラックの運転手に事情を説明して助けてもらうも、
後を追ってきた二人組の男にトラックの運転手が銃で殺害されてからは、
事件の深刻性がずいぶんとダークかつ恐ろしいものへと変わってゆく・・・
いわば、
『天才子役、誘拐される』は、ココから本格的な幕開けとなるのです。
2話:犯罪リアリティーショー
シズマを助けてくれたトラックの運転手は、無残にも射殺されてしまった。
オマケに逃亡を企てたシズマは、犯人の男たちからこっぴどく暴行を受けました。
そして・・・
そのボコボコにされた顔を撮影した画像と共に、誘拐犯たちは、
シズマの父親であり、芸能事務所社長である古代進太郎のもとへ、
シズマ誘拐の事実と、身代金10億円を要求するメールを送信しました。
届いたメールを見た進太郎は頭を抱える!
「10億なんてある訳ねえだろ!」
まず、ムスコの心配よりも身代金の額に怒り心頭の父親だった。
正直、この父親はクズだ。
なぜならこの時、シズマの誘拐事件を使って、シズマを世界全土に宣伝しようと考えたからです。
進太郎は、犯人と交渉して、身代金を15億支払うから、
この誘拐事件をエンタメ化させて世間に公表させて欲しいと訴えます。
すると・・・
信じられないことに、犯人は進太郎のムチャクチャな言い分にOKを出してきたのです。
「金が入れば何でもいい」
犯人たちの言い分はこんな感じでした。
早速、進太郎は友人の広告代理店の室長・北見(きたみ)と手を組んで、
大掛かりな『犯罪リアリティショー』を仕掛けようと動き出す・・・
3話:刑法二二五条の二
シズマの誘拐事件とトラック運転手殺害事件は、
すぐに同一犯の犯行ということで、警察は刑法二二五条の二が適用される身代金目的の誘拐事件として捜査を開始しました。
犯人は二人組の男。
警察でも大掛かりな誘拐操作として捜査が始まったわけですが、
実際、捜査を担当している刑事たちは、被害者のシズマを可哀想だと思いつつ、
シズマの父親・進太郎が、誘拐された息子の安否を気遣う素振りもなく、
今回の誘拐事件をエンタメ化しようとしている姿勢に疑問を抱いているのです。
4話:記者会見
犯人たちからボコボコにされたシズマが目を覚ましたのは、とあるラブホテルの一室だった。
そして・・・
その部屋では、犯人の男2人が真剣な顔でテレビ画面を見守っていました。
シズマがテレビ画面に視線を移すと、画面にはちょうどシズマの誘拐事件の報道が流されているところだった。
しかも・・・
その数分後にはシズマの父・進太郎が記者会見を始めました。)
「私の息子が誘拐されました。」
進太郎のしおらしい悲劇の父親っぷりをテレビ画面で見たシズマはすぐに理解してしまった!
あの嘘くさい演技、
そして進太郎が話をしている背後モニターに映し出されるシズマの主演したメディア作品の数々。
明らかに進太郎はこの誘拐事件をシズマのプロモーションに使おうとしている。
「これって…販促…?」
父親の意図に気づいたシズマは体を震わせてショックをうける・・・
5話:お父さん
{父さんに僕を助けるつもりはない}
{金儲けに使う気だ}
父の記者会見を見てそう確信したシズマは、過去の思い出に心を逃避させる。
それはまだシズマが父のことを尊敬して大好きだった頃の純真な思い出だった。
まるで無菌状態の中でシズマを育てようと、異常な過保護状態の中で気を使うう母・栞(しおり)に対して、
もっと普通の子供として自分にいろんな体験をさせてくれた父親・進太郎。
{あの頃の父さんは大好きだった}
父親との良き思い出に浸るシズマ。
だが・・・
その後、シズマは父親と若い女性との不倫現場を目撃した頃から、
少しづつ父親への信頼や尊敬の気持ちが薄れてゆくのを感じ始める・・・
話は変わってその頃、
進太郎は、誘拐犯の男たちに支払う身代金を運ぶ係として、
とんでもない人物のキャスティングに動いていました・・・
6話:清きヒロイン
「えっ…私?」
進太郎の記者会見を偶然見ていたトップアイドルの猪俣陽菜子(いのまたひなこ)が驚きの声を上げた。
そりゃそうだ!
いきなりシズマを開放してもらうための身代金を運ぶ人間として、生放送で指名されたわけだから。
「厄介事に巻き込みやがって!」
「全部この男の茶番だろうが!」
清きヒロイン・陽菜子が所属する『ホリディプロ』の社長が苦々しそうにテレビ画面に向かって吐き捨てていた。
しかし・・・
当の陽菜子は、4年前『朝ドラ』で共演したシズマを弟のように可愛がっていたこともあり、
「シズマ君のためなら」
と…
犯人へ身代金を運ぶ役目を引き受けることをその場で社長に直訴したのです。
まんまと進太郎の筋書き通りに進んでゆくシズマの誘拐事件は、
まさにメディアと視聴者を巻き込んだエンタメワールドへと突入してゆく・・・
7話:攻防戦
シズマが監禁されているラブホテルでは、犯人の1人とシズマが浴室で激しい攻防戦を繰り広げていました。
美形少年の裸を見て興奮した犯人は、相方の男がいないのをいいことに
シズマにいたぶりながら性的暴行を加えようとしていたのです。
非力ながらもなんとか犯人に反撃したシズマでしたが、
不幸にもその攻撃が余計に犯人の性的欲望を掻き立ててしまう結果に・・・
凌辱されそうになるシズマ!
その時だった・・・
犯人の男に裸のシズマが押さえつけられたところで、もう1人の犯人が戻ってきました。
すると・・・
2人のただならぬ光景を目にしたもう1人の犯人は、無言でシズマにまたがっている男を半殺しにしてしまったのです。
そのあと、素行の悪い犯人を懲らしめたもう一人の犯人は、
シズマに食事と着替えを買うために再びホテルの部屋から出て行きました。
静かになった 部屋のテレビ画面からは、相変わらずシズマの誘拐事件を伝えるニュースが放送されていて、
その裏では、各テレビ局と進太郎がシズマ誘拐事件にかかる放映権料をめぐって攻防戦が繰り広げられていました。
現在ワイドショーでは、身代金を運ぶ役割を買って出たトップアイドル・陽菜子とシズマとの間には、
お涙ちょうだい的な姉弟ストーリーが構成され始め、
ますますシズマの誘拐事件は、エンターテイメント的な盛り上がりを見せていました。
そして・・・
そんな加熱してゆくテレビの盛り上がりを見ながら、満足そうに画面を見つめている進太郎のしたり顔があった・・・
8話:人道的ランナー
この8話が1巻の最終話となります。
進太郎が10億の身代金を用意することができなかったために、
カラのアタッシュケースを持って犯人との身代金受け渡し場所へ向かうこととなった陽菜子。
出発地点となる渋谷駅前では、まるでハロウィン当日のような人の賑わいで、
誘拐されたシズマを助けるために立ち上がった人道的ランナーの陽菜子を一目見たいと大勢の人が詰めかけていました。
実際は陽菜子を見たいだけだが・・・
犯人が最初に指定した場所は渋谷駅からほど近い『渋谷106』という若者の流行発信基地的なファッションビルでした。
犯人はそこで陽菜子に今のマラソンランナーのようなカッコウから、
アイドルらしいヒラヒラでパンチラするような服に着替えさせろと要求してきたのです!
さぁ~どんどんとエンタメ化に拍車がかかってきたシズマの誘拐事件が新たな展開を迎えました・・・
こんな感じでこの1巻は幕引きとなります。
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『天才子役、誘拐される』感想のまとめ
1話から始まった天才子役・シズマの誘拐事件は、シズマの父親・古代進太郎によって、
日本中を巻き込む誘拐エンタメショーへと形を変えてゆきます。
警察の公開捜査も始まり、TV・SNSを使っての誘拐ショーを許可した犯人たちの真意とは一体?
と…
まさに過激なエンタメがココにあり!って感じの作品です♪
あと・・・
あの時、シズマは犯人の一人に凌辱されていたのか?
態勢が態勢だったのでレイプされているようにしか見えませんでした。
ただ・・・
この作品には、気になる伏線的要素がたくさん詰まっているところが期待大なのです。
息子シズマの体とシンクロしている奇妙な体質の母親の存在。
この母親の存在こそが、まるしーが冒頭の『見どころ』部分で書いた”エヴァ”を感じた部分なんです♪
そしてここからは様々な人間たちを巻き込んで、すでにメディア化された誘拐事件が、
ますますそのエンタメ性をエスカレートさせてゆく様子が描かれています。
そう・・・
父親にも、芸能界にもシズマの命なんかコレっぽっちも大事にされないで・・・
金・金・金
「人は自らの欲望のためならなんだってする」
実に醜くてリアルだ・・・。
今後、犯人から出されるであろう無理難題な要求に、陽菜子はどこまで応じてゆくのか?
ますます面白くなってきました♪
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